ライフイベントを紡ぐ栄養環境への適応機構

幼い個体の成長、性成熟を経た次世代の誕生、そして老化は、ヒトを含む全ての動物種の一生に必然の過程である。絶えず変化する栄養環境にさらされる動物が、どのようなメカニズムを働かせて適応しているのかを、モテ? ル生物・非モデル生物を駆使し、マルチオミックスデータをもとに議論する。ます?、幼い個体の健やかな成長に 欠かせない、栄養バランスの変化に柔軟に対応する全身性システムに着目する。栄養素の中でも、最近発見されたアミノ酸の取り込みを調節する細胞間コミュニケーション機構と、個体の一生を越えて進化にも貢献する脂肪 酸代謝を利用した適応機構を議論したい。次に、栄養シグナルを感知して性成熟の進行を調節する神経内分泌系 の作用機序に注目して議論するとともに、摂取した栄養が代謝されてメチル化情報に変換された際の寿命と老化 に果たす役割を紹介したい。さらに、食糧が枯渇する季節を乗り切るために獲得された冬眠時の栄養活用の実体について議論したい。

講演者(所属)演題名(順不同)

  • 北野 潤(遺伝研)
  • イトヨの淡水進出を支える脂肪酸代謝
  • 八代田 陽子(理化学研究所環境資源科学研究センター)
  • アミノ酸取り込みを調節する酵母細胞間相互作用
  • 山口 良文(東京大学大学院薬学系研究科)
  • 哺乳類の冬眠を可能とする全身性代謝変化の分子基盤
  • 束村 博子(名古屋大学大学院生命農学研究科)
  • 低栄養による哺乳類の生殖機能抑制の脳内メカニズム
  • 深水 昭吉(筑波大学 生命領域学際研究センター)
  • 栄養-メチル化作用が働きかける代謝と老化
  • 上村 匡(京都大学大学院生命科学研究科)
  • 個体成長において栄養バランス変化への適応を支える全身性シグナル経路