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Discussionせずにビデオ撮影??

差出人 : Tadashi Uemura
送信日時 : 2001年 4月 25日 水曜日 10:29 AM
件名 : Discussion せずにビデオ録画?

Jfly 会員の皆さま

京都の上村です。皆さんにお尋ねしたいことがあります。学会会場にビデオを持ち込み、口頭発表を逐一撮影したり、ポスター会場で議論もせずに撮影だけして立ち去る行為を、どうお考えになるかです。

昨日海外から二人の友人が訪ねてくれました。友人の一人は、京都で開かれた International Conference on Alzheimer's Disease and Parkinson's Disease でポスター発表をしたのですが、その学会の模様を尋ねたところ、次のような返事でした。「たくさん私のポスターに来てくれたのだけれど、多くの人がビデオ片手に逐一撮影した後、こちらから話しかけても、『結構です。』と言ってそのまま立ち去ってしまった。私のポスター以外でも、他のポスターをビデオやカメラ撮影している人が何人もいた。私はとても神経質になってしまった。」そのビデオ撮影者の一人の名札に書かれた所属は、ここでは触れないでおきます。

友人はその美しい微笑みを崩さずに話してくれたのですが、それがかえって私をとても恥ずかしくし、酔いも醒めてしまい(結局は酔った?)、ドヨヨーンと心の中に暗ーいシコリを残しました。私の最大の危惧は、上記のような現象は、日本で開催される国際学会に特有のことではないかということです。「発表者から話しかけられても Discussion もせずにポスターをビデオ録画して立ち去る」など、私のスタンダードでは仁義を踏みにじった行為だと思うのですが、皆さんいかがお考えでしょうか。Fly meeting でそんなことする人いますか?

ひとしきり議論したその後で、例えば、「この写真はとても印象的なので撮影してもよいか。」とお願\いをするならまだわかります(私はしませんが)。別の友人から知らされたケースでは、「日本国内の非公開の研究会で口頭発表していたら、近い研究をしているグループのメンバーに逐一ビデオに収められた。」とのこと。比喩を持ちだすのは適当でないでしょうが、苛烈な値下げ競争をしている家電量販店の間でも、ライバル店の売り場で売り値を逐一メモする行為はお互いの不文律で禁止していると、いつぞやテレビで見ました。

長くなりましたが、私の具体的な危惧を最後にまとめます。取り越し苦労なら、お笑い下さい。

(1)この7月京都で国際細胞生物学会が開かれます。私も末席ながらプログラム委員としてお手伝していますが、その会期中に、同じことが起きないだろうか。海外から日本で開催される学会に参加してくれる皆さん(招待講演者だろうがポスター発表者だろうが関係なく)が、「日本はとんでもない無法地帯だ。」との悪印象を持ち帰らないだろうか。

(2)上記の学会には、国内の学生を含めたたくさんの皆さんが参加されると思いますが、普段海外の学会に参加するチャンスのない学生は、上記のような行為を目の当たりにしたら、「なるほど、ビデオ撮影すりゃお手軽でいいジャン。」と考えて、今後海外でそのような行為に走らないだろうか。

(3)このメールを読んでいるあなた、もしかしてご自分のラボのメンバーに、「あのポスターをビデオに収めてこい。」とか言ってません?

上村


差出人:Tadashi Uemura
送信日時:2001年 4月 26日 木曜日 2:17 PM
件名: Re:[Jfly] Discussion せずにビデオ録画?

皆さま

上村です。レスポンスありがとうございました。堀田先生、先生がお楽しみになる歌謡曲を次回私にも拝聴させて下さい。伊藤さん、緻密なご意見をありがとうございました。永久保存版です。いちいちうなずいて私の足すセリフはありません。

ハエ研究者以外の方から頂戴したご意見を、ご本人の承諾を得て流させて頂きます。

> 上村様、
>
> そうですか、そこまでひどくなってますか。
> タイムリーにも、本日昼から奈良先端大において「プレゼンテーション」の講義が
> 入っています。ちょっとぶちかましておきます。
> ISDBには新しい規約として、Officialに規制すべきでしょう。こんなん、どっから
> みても著作権侵害でしょうがあ!
> 恥を知れ、恥を!
>
> Yo
>
> PS:何も知らない大学院生は、ただ純粋に大人のやっていることをまねて育つ。ああ
> 、こわー。

私は全く同感です。一つの考え方としてお受け止め下さい。上村


on 01.4.26 11:42 AM, ITO, Kei at itokeiアットマークnibb.ac.jp wrote:

> もちろん許可を求められれば断わればいいだけの話なのでしょうけれど、
> 学会発表って、どういう目的でやるものなのでしょうね。私の場合、ま
> だ完成してない(あと半年か1年、2年くらいすれば完成しそうな)話
> を発表して、外部の人の客観的な意見を求め、それを参考に仕事の軌道
> 修正などをして仕上げてゆく場として学会を捉えています。ただそうす
> ると少々 critical な未発表データも学会に出しますから、それはあく
> まで討論のネタであって、写真やビデオに撮って持ち帰られるのは「勘
> 弁してくれ」という感じになります。
>
> が、分野や人によっては、論文投稿直前まで学会では殆ど発表しない場
> 合もあるようです。学会で見て「ほぉ」と思った話が、翌月や数ヶ月後
> の雑誌にもう出ているのを見ると(つまり学会の時点ではすでに論文を
> 仕上げて投稿中だったということ)、「記者発表でもあるまいし、それ
> だったら学会なんていらないじゃん・・・・」と思ってしまいます。熾
> 烈なクローニング競争のまっただ中に身を置いていない人間の、脳天気
> な戯れ言なのかも知れませんが。
>
> 写真やビデオ撮影が学会で当たり前になるということは、撮られても構
> わないレベルに仕上がった内容しか発表できないということになってし
> まいます。これは、学会というものの存在価値にとって、ひいてはそこ
> に参加する我々研究者にとって、非常なマイナスだと思います。
>
> とくに学生にとっては。今どきの大学院生の仕事は、学位取得までに論
> 文3報なんてのは夢の話で、1つの仕事の完成まで3年程度かかるのが
> 普通でしょう。仕事を始めて1年くらい経って、少し目鼻が付いてきた
> あたりからどんどんあちこちの学会で発表して、いろいろな人からコメ
> ントをもらうことが大切な気がします。ところがもし学会では「撮影・
> お持ち帰りOK」レベルのデータを出すのが当たり前という風潮になっ
> てしまうと、学生は論文を仕上げる段階(=学位取得直前)になるまで、
> 殆ど学会発表できなくなってしまう。自分が研究を進めながら成長して
> ゆく段階で、研究室外の「他人」からコメントや批判や支援をもらうこ
> とができない。それはまずいでしょう。
>
> 面白かった他人の発表を記録に撮って持ち帰りたい、と思うのは確かに
> 人情ですが、それをやるということは、自分の発表も記録に撮られて持
> ち帰られてしまう、ということですから、結局は学会の雰囲気をだんだ
> ん息苦しいものにしてしまい、自分で自分の首を絞めることになりそう
> です。それを避けるためには、各自が「撮りたくても我慢する」ことも
> 大切かなぁ、と。
>
> いとうκ@ Diva という映画を思い出した